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さあ、志賀草津道路国道292号を渋峠へ!
途中、渋・湯田中温泉街への分岐の標識もある。
「ほら、あれが渋温泉。あの温泉巡りするやつ」
「ふーん。でも今日は行かないんでしょ?」
そう、行かないの。
いよいよ登りがはじまる。大きくカーブを描いてグングン高度が上がる。空中にかか
る大きなカーブもある。カーブのたびに、左に右にはるか下方に地上が見える。植生
も変わっている。
「すっごーい! すてきすてき! 長野もいいわー!」
などと後ろのシートで叫んでいる。
11:30頃、峠の頂上に到る前の広い駐車場で、コンビニおにぎりを食す。本日初
の食事。食べていると一台の親子連れの車がやってきて、アスファルトの斜面にシートを拡げて弁当を食べ
始めた。われわれは、何かの小屋の縁側のような所に腰かけていた。
「何もあんな駐車場のアスファルトの上で食べなくても、こっちに来たらいいのに」
声を掛けようと思ったが、お父さんを中心にそれなりに盛り上がっていたので、そっ
としておいた。
さて、夏休み最後の土日でもあるから、宿の手配をしておいた方がよい。そのわれわ
れがおにぎりを食した小屋には公衆電話がついていた。われわれは「美ケ原温泉」に
泊まることにしていたが、どの宿かは決めていなかった。妻は、露天風呂に入りたい。
私は安ければよい。できれば食い物が良い方がいい。それも信州の郷土料理かソバが
食べたい。
「ねえ、ここに聞いてみてもいい?」
「ん? なんでその旅館なん?」
「露天風呂があるから」
その旅館はわれわれの情報では、料金不明・やや高級・「京風懐石料理」の宿で、私
の中では対象外であった。電話してみると一泊12,000円ということだったので、可と
した。
「今、渋峠にいるんです」
「ええーっ!? じゃあ到着は何時になりますか?」
「うーん、6時頃には行きます」
つづく
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