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2000年8月 信州←京都
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   「京風懐石」と言えば、旨くも何ともないものがちょっとずつ・ちょっとずつ出てき て何やら腹は変にふくれたがちっとも満足できないのに、
 「こんなに高けりゃ、満足しなくちゃいけないのかな」
と料金で胸いっぱいになる、というイメージがあったのだが、次へ次へと出される料 理はどれもこれもが旨くて、長野の松本で出されるサシミにも全く違和感がなく、し かも旨かった。
 「これはおいしいな〜!」
 「これはいったい何だろうね」
 「さっきのお寿司は何ですか?」
 (あれは、「くらげ」なんですよ。歯触りがめずらしゅうございましょう?)
 「この料理だと、料理だけで1万円って言われても文句は言えないよねぇ」
 「チップって渡さなくていいのかな?」
われわれは、思わず大きな声で、あるときはヒソヒソと、(料金を)心配しながら、 料理には感動しながら、全部平らげてしまった。二人とも文字通り「腹いっぱい」に なってしまった。
 そして、ちゃんとした料理には正しい器(うつわ)と食する順番があるのだと知った。

 食事から戻ると床が敷いてあって、脱ぎ捨ててあったジージャンや荷物はきちんと片 付けられていた。
  風呂は熱からずぬるからず。こじんまりした内風呂に、可愛い露天風呂と、「洞窟」 というよりは「岩屋」の野外風呂。しかし、どちらも大変清潔で気持ちが良かった。 (入浴時間は6時〜23時)
 「これで1万2千円ってホントかな〜? いろいろくっ付いて請求されるのかな」
 確かに、部屋にトイレが無いばかりか、トイレや洗面所は2階まで降りなければなら ない共用だし、昭和40年代前半築という感じの中途半端な古さだし、建物や設備の 「アメニティ」を考えると、どうしようもなく「古い」。
 しかし、全く不満や違和感を憶えなかったのは、料理が旨く、仲居さんがとても感じ が良かったのと掃除や手入れが大変行き届いていたからだと思われた。

 翌朝の食事は弁当用の重箱に入れたら「こんなもんだな」という内容ではあったが、 それぞれの「おかず」が考えられた器に、こだわりをもって盛り付けられていて、 それがまた、旅館の「こころ配り」を感じさせた。部屋に戻るとふとんは片付けられ ていた。

つづく
 
 
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